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不動産投資の減価償却|投資を成功させるための節税の仕組みと売却時の注意点を徹底解説

不動産投資で大きな節税効果を得るためには「減価償却」の理解が欠かせません。減価償却費を活用することで、所得税や住民税を抑えることができるだけでなく、損益通算によって給与所得にかかる税金も軽減する可能性があります。

 この記事では、減価償却費の計算方法や節税の仕組み、さらには売却時の税金への影響などをわかりやすく解説します。不動産投資を成功させるために、効果的な減価償却の活用法をしっかりと把握しましょう。

不動産投資における減価償却費とは

 不動産投資における減価償却とは、購入した建物の価格を年数にわたって少しずつ経費として計上する仕組みです。この計上される経費のことを「減価償却費」と呼びます。例えば、建物価格が5,000万円の場合、確定申告の際に「減価償却費の計算」欄に「建物5,000万円」と記載し、毎年その一部を経費として申告します。

 建物は経年劣化によって資産価値が徐々に減少するため、減価償却費を計上して建物の簿価を減らしていくことが必要です。例えば、5,000万円の建物に投資し、1年目に250万円を減価償却費として計上した場合、建物の未償却残高は4,750万円となります。同様に2年目に250万円を計上すれば、残高は4,500万円に減少します。このように、建物価格は毎年少しずつ経費として計上できますが、土地は経年劣化しないため減価償却の対象とはなりません。

 不動産投資の利益(不動産所得)は、家賃収入から減価償却費を含む経費を差し引いて算出されます。所得税や住民税はこの利益に対して課税されるため、減価償却費を適切に計上し、利益を圧縮することで、支払う税金を減らすことが可能です。したがって、減価償却費は不動産投資における節税に大きく影響する重要なポイントです。

減価償却の額の決まり方|計算方法について解説

 減価償却費は不動産投資における節税の要となる経費であり、その計算方法は税法に基づいて厳密に定められています。経年劣化の程度を自己判断で決めることはできないため、正確な計算が必要です。正しい計算方法を理解し、適切な減価償却費を計上することで、税金を効果的に抑えることが可能です。

減価償却費の計算式

減価償却費は以下のシンプルな計算式で求められます。

減価償却費=建物価格 ÷ 減価償却期間

たとえば建物の価格が5,000万円で減価償却期間が25年の場合、「5,000万円 ÷ 25年 = 200万円」となり、毎年200万円を経費として計上できます。

減価償却費に影響を与える3つの要素

 減価償却費に影響を与える要素は「建物価格」「建物付属設備」「法定耐用年数」の3つです。

建物価格

 不動産投資において、土地は減価償却の対象外であるため、まずは投資金額を土地と建物に分ける必要があります。売買契約書に両者の金額が明示されていることが一般的ですが、明示されていない場合は按分が必要です。この際、建物価格が高いほど減価償却費も大きくなり、節税効果が高まります。しかし、極端な按分は税務署からの指摘を受ける可能性があるため、専門家に相談しながら適切に分けることが重要です。

 さらに建物価格が明確になった後、建物本体と付属設備に分けることが推奨されます。これは両者の減価償却期間が異なるためです。

建物付属設備

 建物と付属設備を分けることで、減価償却期間が短い付属設備に対して早期に減価償却費を計上できるため、税金の負担をさらに軽減できます。

 以下は建物付属設備の例です。

・アーケード、日よけ設備
・電気設備(照明設備を含む)
・給排水、衛生設備、ガス設備

法定耐用年数

 法定耐用年数とは、税務上で建物が使用できる期間を指し、新築物件の場合、この期間が減価償却期間となります。建物の構造・用途による主な法定耐用年数は以下の通りです。

構造用途法定耐用年数
木造・合成樹脂造住宅用
事務所用
22年
24年
木骨モルタル造住宅用
事務所用
20年
22年
鉄骨鉄筋コンクリート造
鉄筋コンクリート造
住宅用
事務所用
47年
50年
金属造
※骨格材の肉厚が3mm以下
住宅用
事務所用
19年
22年
建物付属設備給排水、衛生設備、ガス設備15年
参考:主な減価償却資産の耐用年数表|国税庁

中古物件の残存年数

 中古物件の減価償却計算において、残存年数の重要性は非常に高いです。中古物件を取得する際は、すでに一定の築年数が経過しているため、通常の耐用年数をそのまま適用することはできません。代わりに、「簡便法」と呼ばれる計算式を使用して、残存年数を算出します。これに基づいて減価償却期間を設定し、節税効果を高めることが可能です。

中古物件の残存年数の計算方法

以下は、築年数と耐用年数に応じた残存年数の計算式です。

築年数が耐用年数を超える場合:残存年数 = 耐用年数 × 20%
築年数が耐用年数以下の場合:残存年数 = 耐用年数 – 築年数 + (築年数 × 20%)
 ※小数点以下は切り捨てます。

中古物件の場合、耐用年数ではなく残存年数を使って減価償却を行うため、毎年の減価償却費の計上が可能です。これにより、新築物件と比べて利益を圧縮する効果が高くなるため、節税対策として中古物件への投資は有利です。

中古不動産の建物価格と土地の按分方法

 減価償却費は不動産投資において大きな節税効果をもたらしますが、その額を左右する重要な要素が「建物価格」です。建物の価格は、売買契約書に明記されていることも多いですが、中古物件の場合は交渉の余地があるため、正確な按分が必要です。土地と建物の総額しか記載されていない場合は、按分によって減価償却費を計算することが求められます。ここでは、土地と建物の按分方法について詳しく説明します。

固定資産税評価額を用いた按分

 売買契約書に土地と建物の価格が明示されていない場合、一般的に使用される按分方法は「固定資産税評価額」を基準とする方法です。固定資産税評価額は、毎年課される固定資産税の基準となるもので、市区町村から送られてくる課税明細書に記載されています。この評価額を基に按分することで、建物の価格を算出できます。

【按分の計算式】

投資金額(土地と建物の合計額)×建物の固定資産税評価額 ÷ (建物の固定資産税評価額 + 土地の固定資産税評価額)

 固定資産税の清算は、売買時に売主と買主の間で行われるのが通例であり、課税明細のコピーをやり取りするのが一般的です。この明細書を基に按分を行えば、建物価格が簡単に算出できます。

 課税明細書が手元にない場合は、市区町村に「固定資産評価証明書」を発行してもらうことも可能です。この方法は根拠が明確であるため、税務署から指摘を受けるリスクが低く、安心して利用できます。

当事者間での割合合意

 もう一つの按分方法として、売主と買主が話し合いで土地と建物の金額を合意し、契約書に明記する方法もあります。この場合、注意が必要なのは「減価償却費」と「消費税」の影響です。適切な按分を行わないと、損をするリスクがあるため、契約書をしっかりとチェックし、必要に応じて交渉を行うことが重要です。

買主に有利な按分:
 建物の割合が高い方が、減価償却費を多く計上できるため、毎年の税金負担が軽減されます。
・売主に有利な按分:
 土地の割合が高い方が、支払う消費税が少なくなります。これは、土地が消費税非課税であるのに対し、建物は課税対象となるためです。

 売上高が1,000万円を超えると法人や個人事業主は消費税の課税事業者となりますが、1,000万円以下の場合は免税事業者となり、消費税を支払う必要がありません。そのため、売主が個人や免税事業者である場合、土地と建物の按分に関して利害の対立が生じないこともあります。

 中古不動産における土地と建物の適切な按分は、減価償却費の計上に直接影響を与えるため、非常に重要です。正確な按分を行い、節税効果を最大限に引き出すためには、固定資産税評価額を基に計算する方法が一般的であり、税務署への対応もスムーズです。また、当事者間での合意による按分の場合は、減価償却費と消費税に注意しながら交渉を進めることが成功の鍵となります。

減価償却費の算出方法|新築・中古物件における具体的な事例解説

 減価償却の基本的な考え方や計算方法について解説しましたが、ここからは実際の計算の流れを具体例とともに見ていきましょう。新築物件と中古物件、さらには耐用年数を超えた物件における減価償却費の計算方法を詳しく説明します。

新築物件の場合

 投資金額が5,000万円で、そのうち土地が3,000万円、建物(鉄筋コンクリート造/住宅用)が2,000万円だったと仮定します。まず、建物付属設備がないか確認します。たとえば、700万円分がガス設備などの建物付属設備に該当する場合、建物と建物付属設備の耐用年数を確認します。

建物(鉄筋コンクリート造/住宅用):耐用年数47年
ガス設備等の建物付属設備:耐用年数15年

 この耐用年数に基づき、定額法(耐用年数に応じた償却率を用いた計算方法)で減価償却費を計算します(償却率については以下の資料を参照)。
参考:減価償却資産の償却率表|国税庁

建物:1,300万円(2,000万円 – 700万円)  × 0.022(償却率) = 28万6,000円
建物付属設備:700万円 × 0.067(償却率) = 46万9,000円

新築物件の減価償却費の合計は 75万5,000円 です。

中古物件の場合

 同じ投資金額や内訳で、建物の築年数が10年の中古物件の場合、まず残存年数を計算します。耐用年数は新築と同じですが、築年数が耐用年数を超えていないため、以下の計算式を用います。

建物:(47年 – 10年) + (10年 × 20%) = 39年
建物付属設備:(15年 – 10年) + (10年 × 20%) = 7年

この残存年数を基に、定額法で減価償却費を計算します。

建物:1,300万円 × 0.026(償却率) = 33万8,000円
建物付属設備:700万円 × 0.143(償却率) = 100万1,000円

 中古物件の減価償却費の合計は 133万9,000円 となります。中古物件では残存年数が短いため、減価償却費が大きく、税金が軽減される傾向があります。

耐用年数を過ぎた物件の場合

 次に、築年数が50年の物件をシミュレーションします。耐用年数を超えているため、残存年数は以下のように計算されます。

建物:47年 × 20% = 9年
建物付属設備:15年 × 20% = 3年

この残存年数を基に、減価償却費を計算します。

建物:1,300万円 × 0.112(償却率) = 145万6,000円
建物付属設備:700万円 × 0.334(償却率) = 233万8,000円

 耐用年数を過ぎた物件では、減価償却費の合計が 379万4,000円 となり、非常に大きな額を経費として計上できます。ただし、老朽化によるリフォーム工事などの追加費用が発生する可能性があるため、投資判断にはトータルコストを考慮することが重要です。

 新築、中古、築年数が耐用年数を超えた物件では、それぞれの状況に応じて減価償却費が異なります。特に中古物件や耐用年数を過ぎた物件では、残存年数が短くなる分、毎年の減価償却費が増え、節税効果が高まります。計算の基本を理解し、物件の状況に応じた正確な減価償却費を算出することで、不動産投資における税金負担を効率的に抑えることが可能です。

減価償却費が節税になる仕組み

 減価償却費を多く計上することで、不動産投資にかかる所得税や住民税を大幅に減らすことが可能です。また、不動産所得だけでなく、給与所得にかかる税金も軽減できる場合があります。ここでは、減価償却費がどのように節税につながるのか、その仕組みを解説します。

所得税・住民税における損益通算の仕組み

 所得税が課される所得には、給与所得、不動産所得、事業所得など、さまざまな種類があります。特に、不動産所得と給与所得は「損益通算」が可能です。損益通算とは、異なる種類の所得の損失と利益を合算し、課税所得を減らせる制度です。

 例えば、不動産所得が100万円の赤字で、給与所得が400万円の場合、損益通算によって課税所得は300万円となり、その分、所得税や住民税が軽減されます。不動産所得が赤字だと損失のように思われがちですが、減価償却費は実際に現金の支出を伴わない経費のため、手元資金に大きな影響はありません。

具体的な計算例

 年間の家賃収入が250万円、経費が25万円、減価償却費が300万円、ローン返済が100万円の場合、次のように計算されます。

不動産所得の計算式:家賃収入250万円 - 経費25万円 - 減価償却費300万円 = ▲75万円(赤字)

ただし、実際の手元資金は次の通りです。

実際に手元に残るお金の計算式:家賃収入250万円 - 経費25万円 - ローン返済100万円 = 125万円

 このように、帳簿上では不動産所得が赤字でも、現金の流れは黒字となり、手元に資金が残る仕組みです。減価償却費は実際に現金を支払わない経費であるため、損益通算によって節税効果を得られることが大きなメリットです。

金融機関のローン審査への影響

「不動産所得が赤字だと、次の物件購入時にローン審査で不利になるのでは?」と心配する方も多いですが、金融機関は減価償却の仕組みを理解しています。減価償却費が原因の赤字であれば、賃貸経営が順調であれば、ローン審査において大きな障害になることはほとんどありません。金融機関は実際のキャッシュフローを重視するため、減価償却費による赤字は大きな懸念材料とはならないでしょう。

 減価償却費は、不動産投資における重要な節税手段です。損益通算により、所得税や住民税の負担を軽減できるだけでなく、キャッシュフローを保ちながら税金を抑えることができます。不動産投資を通じて資産を増やすためには、この仕組みを十分に理解し、活用することが成功への鍵となります。

売却時の簿価と税金の関係|減価償却がもたらす影響と節税の注意点

 減価償却費は、不動産投資において現金の支出を伴わずに利益を圧縮できるため、節税効果が大きい魅力的な経費です。しかし、物件の売却時には注意が必要です。減価償却費を計上したことによって、売却時の税金が高くなる可能性があるからです。

売却時の税金の仕組み

 例えば、3,000万円で購入した物件を数年後に同じく3,000万円で売却した場合、利益が出ていないため税金は発生しないと考えるかもしれません。しかし、実際には「売却価格」と「簿価」の差額に対して税金がかかります。

 簿価とは、毎年の減価償却費を差し引いた建物の帳簿上の価格のことです。例えば、3,000万円で購入した物件に対して毎年150万円の減価償却費を計上していた場合、10年後の建物の簿価は次のようになります。

簿価 = 3,000万円 – (150万円 × 10年) = 1,500万円

この物件を3,000万円で売却した場合、売却価格と簿価の差額、すなわち 3,000万円 – 1,500万円 = 1.500万円 が利益と見なされ、この1,500万円に対して税金が課されます。したがって、減価償却によって税金を抑えることができる一方で、売却時には税金の負担が増える可能性があることを理解しておく必要があります。

売却時の税率とタイミングの重要性

 不動産を売却する際の税率は、物件を保有していた期間によって大きく異なります。

保有期間が売った年の1月1日時点で5年以内の売却:譲渡所得税は30%、住民税は9%
保有期間が売った年の1月1日時点で5年を超える売却:譲渡所得税は15%、住民税は5%
参考:土地や建物を売ったとき|国税庁

 売却するタイミングによって税率が大きく変わるため、例えば売却日が1日違うだけで税金の額に大きな差が生じる可能性があります。そのため、物件を売却する際は、タイミングを慎重に見極めることが重要です。

 減価償却費は不動産投資における強力な節税手段ですが、売却時には税金負担が増えるリスクもあります。特に、売却時の簿価と税金の関係を理解し、売却タイミングを適切に選ぶことが重要です。専門家と連携し、トータルで最も効果的な節税を目指すことが、成功する不動産投資のポイントとなります。

まとめ

 不動産投資において、減価償却は必ず押さえておきたい重要なポイントです。減価償却をしっかり理解し、事前にシミュレーションを行うことで、投資後の所得や税金負担を正確に見積もることが可能です。

 またローン返済を続けると利子の割合が減少し、税金の効果も変わることがあります。これに対応するためには、税金対策を適切に行うことが大切です。不動産投資を成功させるためには、信頼できる専門家のアドバイスを受けながら計画的に進めることが重要です。

 当事務所では、不動産に関する節税対策の無料相談を実施しています。ご興味のある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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