不動産
不動産投資で賢く節税|所得税や住民税を軽減する方法と注意点を徹底解説
不動産投資を通じて節税を検討している方は多くいらっしゃいますが「本当に節税効果があるのか?」と疑問を持つ方も少なくありません。実際、不動産投資には所得税や住民税、相続税を軽減するための有効な仕組みがあります。しかしながら、効果的な節税を実現するには、事前にその仕組みや注意点をしっかり理解することが不可欠です。
この記事では、不動産投資による具体的な節税の仕組みや対象となる税金の種類、節税効果を高めるための物件選びのポイントについて詳しく解説します。不動産投資で最大限の節税効果を得るための参考にしてください。
目次
不動産投資が節税につながる仕組み
不動産投資による節税は、全ての人に当てはまるわけではありません。しかしながら適切な条件が揃えば、所得税や住民税の負担を軽減する効果が期待できます。まずは、不動産投資がどのように節税につながるのか、その仕組みを詳しく解説します。
初期費用を経費に計上して課税所得を削減
不動産投資を始める際には、物件購入時にかかる初期費用があります。この初期費用は多くの場合、経費として計上可能です。不動産所得が赤字となった場合には、他の所得(給与所得や事業所得)と損益通算することで、課税所得が下がり、所得税や住民税の負担が軽減されます。具体的に経費として認められる初期費用には以下が含まれます
・印紙税
・登録免許税
・司法書士報酬
・不動産取得税
・事務手数料、保証料
契約書に貼付する印紙税や、登記に必要な登録免許税、司法書士報酬などは必要経費として認められます。さらに、不動産ローンを利用して物件を購入する場合、金融機関や保証会社へ支払う事務手数料や保証料も経費として計上可能です。
また、仲介手数料や火災保険・地震保険の損害保険料も初期費用に含まれますが、これらは原則として物件取得時の経費としてではなく、減価償却や契約期間に応じた費用として計上します。例えば、5年間の保険契約に10万円を支払った場合、毎年2万円を経費として計上できます。
減価償却を活用して損益通算を実現
不動産投資の節税において、最も重要な要素の一つが減価償却です。減価償却とは、物件取得費用を一度に経費として計上せず、法定耐用年数に基づき分割して経費に計上する仕組みです。例えば、2,000万円の建物を購入し、耐用年数が20年と定められている場合、毎年100万円を経費として計上することが可能です。
減価償却を活用して不動産所得が赤字になった場合、その赤字を他の所得と損益通算することが可能です。損益通算により、課税所得を削減し、結果として所得税や住民税の負担が軽減されます。減価償却は実際の現金の流出を伴わないため、キャッシュフローを維持しながら効果的に節税を行うことが可能です。
所得が高い人ほど大きな節税効果が期待できる
不動産投資による節税効果は、特に所得が高い人ほど期待できます。これは、日本の所得税が累進課税制度を採用しているため、所得が増えるにつれて税率が上がるからです。所得税率は以下の7段階に分かれています。
<所得税の速算表>
課税所得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000~194万9,000円 | 5% | 0円 |
195万~329万9,000円 | 10% | 9万7,500円 |
330万~694万9,000円 | 20% | 42万7,500円 |
695万~899万9,000円 | 23% | 63万6,000円 |
900万~1,799万9,000円 | 33% | 153万6,000円 |
1,800万~3,999万9,000円 | 40% | 279万6,000円 |
4,000万円~ | 45% | 479万6,000円 |
例えば、課税所得が500万円の場合、所得税は57万2,500円ですが、700万円の場合は97万4,000円となります。このように、所得が高いほど税負担が大きいため、損益通算による節税効果も高まります。高所得者にとって、不動産投資は非常に有効な節税手段となり得ます。
【課税所得金額500万円の場合】
・57万2,500円:(500万円×20%-42万7,500円)
【課税所得金額700万円の場合】
・97万4,000円:(700万円×23%-63万6,000円)
不動産投資を通じた節税は、初期費用の経費計上や減価償却を活用して所得税や住民税の負担を軽減する有効な手段です。特に高所得者にとっては、税金の削減効果が顕著に現れ、キャッシュフローを維持しつつ、効果的に節税を行うことが可能です。不動産投資を成功させるためには、これらの節税の仕組みをしっかり理解し、戦略的に活用することが重要です。
不動産投資で対象となる節税の可能な税金の種類
不動産投資を活用することで、どのような税金の負担を軽減できるのでしょうか。ここでは、不動産投資を通じて節税が可能な主な税金の種類について詳しく解説します。
所得税の節税効果
所得税は、個人の所得に課せられる税金です。給与や賞与、事業収入、そして不動産投資からの家賃収入などが対象となります。所得税は1月1日から12月31日までの1年間の全所得から所得控除を差し引いた残りの課税所得に基づいて計算されます。さらに、2037年までは基準所得税額に2.1%を上乗せした「復興特別所得税」が課税されます。
不動産投資による家賃収入は「不動産所得」に分類され、他の所得と合算して所得税額が算出されます。不動産投資においては、減価償却費や修繕費、損害保険料など、収入を得るためにかかった費用を必要経費として計上することができます。これにより、課税所得が減少し、所得税の負担を軽減することが可能です。また、不動産所得が赤字になった場合には、給与所得など他の所得と損益通算を行うことで、さらに税金の負担を軽減することができます。特に会社員が副業として不動産投資を行った場合、給与所得にかかる所得税を効果的に節税できる可能性があります。
住民税の節税効果
住民税は、地域に住む個人が市区町村や都道府県に納める地方税です。住民税は「所得割」と「均等割」の2つから構成されます。「所得割」はその年の所得に応じて課税され、一律10%の税率が適用されます。「均等割」は所得に関係なく定額で課税され、通常は5,000円です。
不動産投資によって経費を計上したり、不動産所得が赤字となって損益通算を行ったりすることで、所得を圧縮できれば、住民税の負担も軽減されます。所得税と同様に、住民税も節税の対象となるため、経費や減価償却をうまく活用することが重要です。
相続税の節税効果
相続税は、相続によって取得した財産に対して課税される税金です。相続財産が一定の基礎控除額を超える場合、その超過分に対して課税されます。基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算され、相続税の税率は課税遺産総額に応じて10%から55%までの8段階に分かれています。
不動産投資は、相続税の節税対策としても非常に有効です。不動産は、預貯金や金融資産とは異なり、相続時の評価額が市場価値よりも低くなる傾向があるため、課税評価額を抑えることができます。これにより、相続税の負担を大幅に軽減することが可能です。
不動産投資を通じて節税が可能な税金には、所得税、住民税、そして相続税があります。これらの税金は、不動産投資に伴う経費や減価償却をうまく活用することで、税負担を軽減することができます。また相続税対策として不動産投資は非常に有効であり、長期的な資産形成と節税を同時に実現できる魅力があります。
節税の具体的な手法をしっかり理解し、効果的に活用することで、投資のメリットを最大化しましょう。
不動産投資による所得税・住民税の節税効果とは?
不動産投資で赤字が出た場合、所得税と住民税の負担をどれくらい軽減できるのでしょうか。ここでは、会社員として給与所得を得ている場合の具体的な節税効果をシミュレーションして解説します。
例:給与所得700万円のケース
例えば、会社員で年間の課税所得が700万円の場合、通常納めるべき所得税と住民税は次の通りです。
・所得税:97万4,000円(700万円 × 23% – 63万6,000円)
・住民税(所得割):70万円(700万円 × 10%)
・合計納税額:167万4,000円
【不動産投資の赤字を損益通算する場合】
このケースで、不動産投資による不動産所得がマイナス100万円(赤字)となった場合、損益通算によって課税所得が600万円(700万円 – 100万円)に減少します。その結果、納めるべき所得税と住民税は以下のように減少します。
・所得税:77万2,500円(600万円 × 20% – 42万7,500円)
・住民税(所得割):60万円(600万円 × 10%)
・合計納税額:137万2,500円
不動産投資による赤字を給与所得と損益通算することで、年間の納税額を30万1,500円(167万4,000円 – 137万2,500円)も減らすことができました。このように、不動産投資を通じて得られる節税効果は非常に大きく、特に損益通算を活用することで、所得税と住民税の負担を大幅に軽減することが可能です。
不動産投資による赤字を損益通算することで、所得税・住民税の負担を大幅に軽減することができます。特に給与所得が高い会社員にとっては、この節税効果は非常に大きなメリットとなります。不動産投資の赤字がどれほど節税につながるのかを事前にシミュレーションし、効果的な投資戦略を立てることが重要です。
節税効果の高い不動産投資物件の特徴
不動産投資を通じて効果的に節税を行いたい場合、節税に有利な物件の特徴を理解することが重要です。ここでは、減価償却を活用して節税しやすい不動産投資物件の種類とその特徴について解説します。
減価償却が大きくとれる物件を選ぶ
節税効果の高い不動産投資物件を選ぶ際には、まず減価償却費を多く計上できる物件に注目することがポイントです。特に、木造住宅や築古物件は、短期間で多額の減価償却費を計上できるため、課税所得を大幅に削減する可能性があります。
建物の構造に応じて法定耐用年数が異なり、これが減価償却の額に影響します。例えば、鉄筋コンクリート造のマンションは法定耐用年数が47年ですが、木造住宅は22年です。法定耐用年数が短い物件ほど、年間の減価償却費が多くなるため、所得税や住民税の節税効果を大きく享受できるのです。
築古物件で短期的に償却可能
築古物件も節税対策に有効です。築年数が経過した物件は、法定耐用年数が短く設定されるため、短期間での償却が可能になります。法定耐用年数を経過した物件の場合、以下の計算式(簡便法)を用いて耐用年数を計算します:
・法定耐用年数をすべて経過している場合:法定耐用年数 × 20%
・法定耐用年数の一部が経過している場合:法定耐用年数 – 経過年数 + 経過年数 × 20%
ただし、築年数が古い物件は、耐震基準を満たしていない可能性があるため注意が必要です。特に1981年以前の旧耐震基準で建てられた物件は、耐震性に問題があることがあるため、慎重な確認が必要です。
建物比率の高い物件を選んで減価償却を最大化
不動産投資で減価償却の対象となるのは建物のみであり、土地は減価償却の対象外です。そのため、建物比率が高い物件を選ぶことで、より多くの減価償却費を計上でき、節税効果を最大化することが可能です。
しかし、土地と建物の価額が明確に分けられていない不動産取引も多く見られます。根拠のない自己判断で建物比率を決めると、税務署から否認されるリスクがあるため、契約書に土地と建物の価額を明記するか、固定資産税評価額をもとに合理的に按分するなど、根拠資料を準備しておくことが重要です。
節税効果を高めるための不動産投資では、減価償却を最大限に活用できる物件選びが鍵となります。特に木造住宅や築古物件、建物比率の高い物件は、短期間で多額の減価償却費を計上でき、所得税や住民税の負担を大幅に軽減することが期待できます。不動産投資による節税効果を十分に享受するためには、物件の選定時にこれらのポイントを押さえておくことが重要です。
不動産投資の節税する際の注意点
不動産投資を利用して節税を考える際には、いくつかの重要なポイントに注意が必要です。ここでは、節税を成功させるために押さえておきたい注意点を詳しく解説します。
すべての物件が節税に適しているわけではない
不動産投資で節税効果が期待できる物件は限られています。減価償却費を大きく取れる物件、特に償却期間が短く建物比率が高い物件が節税に向いています。木造住宅や築古物件は、その特徴を活かして短期間で多額の減価償却費を計上することができ、節税効果が高いと言えます。
一方、新築の区分マンションは法定耐用年数が47年と長いため、1年あたりに計上できる減価償却費は少額になります。初年度に初期費用を経費として計上することはできますが、2年目以降の節税効果は減少しやすい傾向にあります。このため、節税目的では新築マンションは必ずしも最適ではありません。
収入が低い人の節税効果は限定的
不動産投資による節税効果は、納税額が高い人ほど大きくなります。高所得者は適用される所得税率が高いため、節税によるメリットが大きいのです。しかし、収入が低い人や税率が低い人の場合、節税による効果はそれほど大きくありません。
もし、平均的な収入の人が不動産投資を行うのであれば、節税よりも収益向上や資産規模の拡大を優先して考えることが重要です。収益を安定させることが、結果として長期的な利益に繋がります。
融資審査への影響に注意
不動産投資による赤字を損益通算して節税を行う場合、融資審査への影響にも注意が必要です。不動産所得が赤字になると、金融機関は「事業収益が安定していない」と判断し、融資審査が厳しくなる可能性があります。特に将来的に物件を追加取得して投資規模を拡大したいと考えている場合、赤字が続くと融資が難しくなる可能性が高まります。
ただし、赤字の主な原因が減価償却費であり、キャッシュフローがプラスの場合は、融資審査への影響は限定的かもしれません。しかし、キャッシュフローがマイナスである場合、審査に不利となることが多いです。規模拡大を目指すのであれば、課税所得をプラスに保つ戦略をとるのも一つの選択肢です。
長期的視点で節税効果を考える
不動産投資の本来の目的は、長期的に安定した家賃収入を得ることです。節税はあくまで手段であり、長期的な投資戦略の中でそのメリットを最大限に活かすことが大切です。安易に節税だけを優先すると、将来的な融資や投資の選択肢を狭めてしまう可能性があります。節税効果とキャッシュフローをバランスよく考え、総合的な資産形成を目指すことが成功の鍵です。
不動産投資による節税には多くのメリットがありますが、物件選びや収入、融資審査など、さまざまな要素を考慮しなければなりません。すべての物件が節税に適しているわけではなく、特に高所得者ほど節税効果を享受しやすいという特徴があります。投資規模の拡大や長期的な収益確保を視野に入れ、節税効果をうまく活用していくことが重要です。
不動産投資が相続税の節税に有効な理由とその仕組み
不動産投資は、所得税や住民税の節税だけでなく、相続税対策にも効果的です。ここでは、不動産投資が相続税の節税にどのように役立つのか、その仕組みを詳しく解説します。
不動産は相続税評価額が低く抑えられる
不動産投資が相続税対策に有効な理由の一つは、不動産の相続税評価額が現金や預貯金よりも低くなることです。預貯金は額面通りの評価となる一方、不動産は土地は路線価、建物は固定資産税評価額を基に評価されます。路線価は一般的に時価の80%程度、固定資産税評価額は時価の70%程度とされており、これにより相続税の評価額が下がり、結果として税負担が軽減されます。
賃貸不動産と自宅で異なる評価方法
不動産の相続税評価は、賃貸不動産と自宅で異なります。賃貸不動産の場合、評価額は以下のように計算されます。
・土地(貸家建付地)の評価額=自用地評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)
・建物(貸家)の評価額=固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)
賃貸不動産では、借地権割合や借家権割合が考慮され、さらに賃貸割合(賃貸されている部分の割合)も影響を与えます。例えば、賃貸アパートで5室中1室が空室の場合、賃貸割合は80%となり、この割合に基づいて評価額が決まります。これにより、自宅と比較して相続税評価額を大幅に下げることが可能です。
「小規模宅地等の特例」を活用した更なる節税
不動産の相続において「小規模宅地等の特例」を活用することで、さらに相続税の評価額を抑えることが可能です。この特例を適用する条件を満たすと、賃貸用不動産の土地に対して200㎡まで、相続税評価額が50%減額されます。これにより、賃貸不動産を保有している場合、相続税の節税効果は非常に大きくなります。
特例の適用には一定の条件が必要となりますが、預貯金を賃貸不動産に変えるだけでも評価額を下げる効果があり、特例を利用することでさらに節税効果を高めることが可能です。適用条件や判断が難しい場合には、税務署や税理士に相談すると良いでしょう。
過度な節税はリスクが伴う
不動産投資は効果的な相続税対策になりますが、過度な節税行為は税務署から否認されるリスクがあります。ある事例では、相続人が路線価を基に相続税を申告しましたが、不動産鑑定評価額と大きな差があったため、国税当局から否認され、追徴課税されました。
この事例では「路線価が購入価格や鑑定評価額の4分の1であった」ことや、「節税対策が明らかに過度であった」ことが評価否認の理由となっています。原則として不動産は路線価を基に評価しますが、税務署が「租税負担の公平に反する」と判断した場合、評価を覆される可能性があるため注意が必要です。
不動産投資は、相続税の節税対策として非常に効果的な手段です。不動産の相続税評価額は預貯金と比べて低くなり、さらに賃貸不動産を利用することで評価額を一層下げることが可能です。また、「小規模宅地等の特例」を活用すれば、さらに相続税の負担を軽減することができます。ただし、過度な節税行為はリスクを伴うため、専門家のアドバイスを受けながら適切に対策を講じることが重要です。
まとめ
不動産投資は、初期費用や減価償却を効果的に活用することで、所得税や住民税の負担を軽減する強力な節税手段となります。特に高所得者は、納税額が多いため、その節税効果を大きく享受することができます。
ただし、過度な節税対策は税務署に否認されるリスクもあるため、慎重な計画が必要です。不動産投資を節税目的で始める際は、必ず税理士などの専門家に相談し、正確な情報を基に戦略を立てることが重要です。
当事務所では、不動産を活用した節税対策に関する無料相談を行っております。詳しい情報やご質問は、お気軽にお問い合わせください。
(東京税理士会玉川支部所属(登録番号:139151号)
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