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生前贈与で節税!年間110万円の非課税枠を活用するポイントと注意点を徹底解説

 生前贈与は、相続税を効果的に節税できる手段として広く活用されています。特に、年間110万円の非課税枠を活用すれば、無税で財産を譲り渡すことが可能です。しかし、正しい知識と注意点を押さえないと、期待した節税効果が失われることも。この記事では、贈与税の非課税枠を活用するための基本知識と、成功させるためのポイントを詳しく解説します。相続税対策をお考えの方はぜひ参考にしてください。

目次

生前贈与で相続税の節税は可能?

 生前贈与とは、親や祖父母が生きている間に子どもや孫に財産を譲ることを指します。生前に財産を移転しておくことで、将来の相続時に相続財産が少なくなり、結果的に相続税の負担を軽減することが可能です。このため、生前贈与は相続税対策の一つとして多くの方に活用されています。

 ただし、生前贈与には「贈与税」がかかるため注意が必要です。贈与税は相続税よりも税率が高く設定されているため、計画なしに贈与を行うと、かえって税負担が増えることがあります。しかし、贈与税には一定の非課税枠が設けられており、この非課税枠を上手に活用することで、贈与税を負担せずに生前贈与を行うことができます。結果的に、生前に財産を譲り渡すことで、相続税を効果的に節税することが可能になります。

生前贈与に活用できる贈与税の非課税枠とは?

 生前贈与を活用した節税対策では、贈与税の非課税枠をうまく利用することがポイントです。この章では、代表的な6つの非課税枠を紹介します。

暦年贈与の基礎控除額
相続時精算課税の特別控除額
夫婦間の自宅等の贈与(配偶者控除)
住宅取得等資金の贈与の非課税枠
教育資金の一括贈与の非課税枠
結婚・子育て資金の一括贈与の非課税枠

     これらの多くは、夫婦や子供・孫への贈与に適用されますが、暦年贈与の基礎控除額については贈与する相手に制限がありません。どの非課税枠も上限額が決まっており、それを超えると贈与税が課税される点に注意が必要です。

    暦年贈与の基礎控除額

     最も基本的な非課税枠として、年間110万円以下の贈与が非課税になる「暦年贈与の基礎控除額」があります。毎年110万円までの贈与なら、贈与税がかからず節税効果を得られます。例えば、10年間で合計1,100万円の贈与を行えば、その金額が相続財産から減り、相続税の負担を軽減できます。

     ただし、一度にまとめて贈与したとみなされてしまうケースもあるため、適切に分散して贈与することが重要です。

    110万円以下の贈与で注意すべきポイント

     基礎控除額110万円は受贈者1人あたりの金額です。複数の家族に贈与する場合、それぞれに110万円まで非課税で贈与できますが、1人に複数の贈与者から贈与すると、合計金額に対して贈与税が発生する場合があります。

    死亡前の贈与が相続税の対象になる場合

    贈与者の死亡日相続税の課税対象になる生前贈与財産
    ~令和8年12月31日死亡までの3年以内に贈与された財産
    令和9年1月1日~令和12年12月31日令和6年1月1日以降に贈与された財産
    令和13年1月1日~死亡までの7年以内に贈与された財産
    ▲相続税の課税対象になる生前贈与の時期

     贈与者が亡くなる前の一定期間(改正後は7年以内)に行われた贈与は、暦年課税の基礎控除額以内でも相続税の対象になります。例外的に、教育資金の一括贈与や配偶者控除を利用した贈与などは、相続税の対象外となる場合があります。主なケースは以下の通りです。

    ・遺産を相続または遺贈(遺言書)により取得していない人が受け取った贈与財産
    贈与税の配偶者控除を適用した場合(夫婦間での自宅等の贈与)
    住宅取得等資金の贈与の非課税特例を適用した贈与
    教育資金の一括贈与の非課税制度を適用した贈与(ただし死亡時の残高は除外)
    結婚・子育て資金の一括贈与の非課税制度を適用した贈与(死亡時の残高は除外)
    令和9年1月1日以降、死亡まで3年を超え7年以内の贈与で、総額100万円までの部分

    これらのケースに該当する贈与財産は、死亡前の一定期間内であっても相続税の課税対象にはなりません。

    相続時精算課税の特別控除額とは?

     親子や祖父母と孫の間で生前贈与を行う際、相続時精算課税制度を活用すると、より多くの財産を無税で贈与することが可能です。相続時精算課税は、18歳以上の子や孫が、60歳以上の父母や祖父母から贈与を受ける場合に適用されます(年齢は贈与があった年の1月1日時点で判定されます)。

     相続時精算課税を適用すると、特別控除額2,500万円までの贈与財産は贈与税がかかりません。この控除額は一度に使い切る必要はなく、翌年以降に繰り越して利用することができます。複数年にわたって贈与しても、累計で2,500万円に達するまでは贈与税が課税されません。
     さらに、相続時精算課税の適用は贈与者ごとに行えるため、父と母からそれぞれ贈与を受ける場合は、合計5,000万円まで贈与税がかかりません。

    相続時精算課税の注意点

     相続時精算課税を適用して贈与された財産は、贈与者の死亡時に贈与時の価格で相続税の課税対象になります。そのため、現金など価値が変わらない財産を贈与した場合は、相続税の節税効果はあまり期待できません。将来値上がりが見込まれる財産や、収益を生む賃貸不動産のような財産を贈与する際に、この制度は有効です。

    相続時精算課税贈与基礎控除額の新設

     なお、令和6年1月1日からは相続時精算課税にも年間110万円の基礎控除額が新設されました。この基礎控除により、1人あたり年間110万円までの贈与に対して贈与税はかかりません

     また、相続時精算課税制度の大きな特徴は、相続開始前7年以内に行われた贈与についても、基礎控除額110万円以下であれば相続財産に加算する必要がない点です。これは、相続開始前に行われた贈与の一部が相続税の対象となる暦年課税制度とは異なる点です。

     暦年課税制度を選択した場合、相続開始前7年間に受けた贈与財産が基礎控除110万円以内であったとしても、相続財産に加算されるため、ここが両制度の大きな違いとなります。相続時精算課税制度を活用すれば、相続税対策の一環として効果的に資産を移転できる可能性があります。

    夫婦間での自宅等の贈与(配偶者控除)

    夫婦間で長年連れ添った配偶者に自宅を贈与する場合、贈与税の配偶者控除を利用することで、2,000万円まで贈与税が非課税になります。この制度は、自宅を贈与する場合だけでなく、自宅の購入資金を贈与する際にも適用されます。

    さらに、この配偶者控除は基礎控除額110万円と併用できるため、合計で2,110万円まで贈与税がかからないという大きなメリットがあります。

    ただし、この制度を利用するためには、以下の条件を満たす必要があります:

    • 夫婦の婚姻期間が20年以上であること
    • 自宅の贈与または購入資金の贈与であること

    また、配偶者控除によって贈与税がかからない場合でも、贈与税の申告書の提出が必要です。この点は多くの方が見落としがちなので、必ず申告を忘れないようにしましょう。

    住宅取得等資金の贈与に対する非課税枠とは?

    子供や孫がマイホームを購入する際、親や祖父母などからの資金援助に対して、住宅取得等資金贈与の非課税特例を利用することができます。この特例を活用すれば、一定額まで贈与税が非課税となります。適用期限は令和8年12月31日までの贈与が対象です。

    非課税となる限度額は、住宅の種類によって異なり、次の通りです:

    • 省エネ等住宅:1,000万円
    • 一般住宅:500万円

    この特例を適用するためには、贈与者が父母や祖父母などの直系尊属であることが条件となります。また、贈与がマイホームの購入や増改築のための資金であることが必要です。

    詳細な要件や手続きに関しては、国税庁のホームページをご確認ください。

    教育資金の一括贈与に対する非課税枠とは?

     子供や孫に対して教育費を一括で贈与する場合、教育資金一括贈与の非課税制度を活用することで、最大1,500万円まで贈与税が非課税となります。この制度の適用期限は令和8年3月31日までです。

     通常、教育費はその都度支払う場合、扶養の範囲として贈与税がかかりませんが、この制度では将来必要となる教育費を前もってまとめて贈与することが可能です。贈与する際には金融機関で所定の手続きを行い、非課税で贈与ができます。

     また、学校の授業料だけでなく、塾や習い事の費用も非課税の対象です。ただし、1,500万円の非課税枠のうち、塾や習い事に関しては500万円が上限です。

     この非課税制度を利用するには、金融機関で教育資金専用口座を開設し、その口座を通じて資金を引き出します。資金を使用する際は、金融機関に領収書を提出する必要があります。

    結婚・子育て資金の一括贈与に対する非課税枠とは?

     子供や孫に結婚や子育てのための資金を一括で贈与する際には、結婚・子育て資金一括贈与の非課税制度を利用することで、最大1,000万円まで贈与税が非課税となります。この制度の適用期限は令和7年3月31日までです。

     非課税枠の内訳として、結婚資金には300万円までの上限があり、それを超えた額には贈与税がかかります。結婚や子育てに必要な費用をまとめて贈与することで、将来の資金準備を効率的に行うことができます。

     この制度を利用するためには、金融機関で専用の結婚・子育て資金口座を開設し、そこから資金を引き出します。教育資金一括贈与の非課税制度と同様、領収書の提出が必要です。

    詳しい内容や条件については、国税庁のホームページまたは以下の記事をご確認ください。

    生前贈与(暦年贈与)を活用した相続税節税の具体例

     贈与税の非課税枠の多くは、特定の目的に限定されています。しかし、暦年贈与の基礎控除額である年間110万円の非課税枠は、贈与する相手や贈与目的に制約がありません。この章では、暦年贈与を活用して相続税を節税する具体的な例を紹介します。

    たとえば、財産が2億円あり、相続人が配偶者と子供2人の合計3人の場合で、以下の2つのケースを比較します。

    1. 財産の全額を相続で受け継ぐ場合
    2. 一部を生前贈与(暦年贈与)する場合

    各相続人が相続する財産の割合は法定相続分(配偶者1/2、子供1人あたり1/4)に従うものとし、財産の増減は考慮しません。

    財産を全額相続で受け継ぐ場合

     生前贈与を行わず、全財産を相続した場合、配偶者の税額軽減によって配偶者には相続税がかかりません。相続税を負担するのは2人の子供のみで、総額約1,350万円の相続税が課税されます。

    一部を生前贈与(暦年贈与)する場合

     年間110万円の非課税枠を利用して、2人の子供にそれぞれ110万円ずつ生前贈与を行い、これを20年間継続したとします。1人あたりの贈与額は非課税範囲内のため、贈与税は発生しません。

     この場合、総額4,400万円(110万円×2人×20年)が相続財産から減少することになります。ただし、死亡前7年以内の贈与は相続税の対象となるため、実際に減少する相続財産は2,860万円(110万円×2人×(20年ー7年))です。

     結果として、相続時の財産は1億7,140万円(2億円-2,860万円)となり、2人の子供にかかる相続税は約993万円となります。財産全額を相続で受け継ぐ場合に比べ、約357万円の節税効果が得られます。

    一部を生前贈与(相続時精算課税贈与)する場合

     年間110万円の基礎控除を利用して、2人の子供にそれぞれ110万円ずつ生前贈与を行い、これを20年間継続したとします。1人あたりの贈与額は基礎控除範囲内のため、贈与税は発生しません。

     この場合、総額4,400万円(110万円×2人×20年)が相続財産から減少することになります。相続時精算課税贈与の場合、暦年贈与と異なり、相続開始前7年以内に行われた贈与についても、基礎控除額110万円以下であれば相続財産に加算する必要はありません。したがって贈与した4,400万円が減少する相続財産として見なすことができます。

     結果として、相続時の財産は1億5,600万円(2億円-4,400万円)となり、2人の子供にかかる相続税は約815万円となります。財産全額を相続で受け継ぐ場合に比べ、約535万円、暦年贈与する場合に比べ178万円の節税効果が得られます。

    さらに非課税枠を増やす方法

    この例では単純に年間110万円の暦年贈与を行いましたが、以下の制度を併用することで、さらに非課税で贈与できる額を増やすことが可能です:

    夫婦間の自宅贈与(配偶者控除)
    住宅取得資金の贈与
    教育資金の一括贈与
    結婚・子育て資金の一括贈与

    これらの非課税枠を組み合わせることで、より多くの資産を効率的に非課税で贈与することができ、相続税対策をさらに強化できます。

    110万円の非課税枠が通用しないことがある?

    毎年110万円の非課税枠を活用して贈与を行う方法は、相続税の節税対策として有効です。しかし、一定の条件下では、この110万円の非課税枠が通用しないケースもあります。以下では、具体的な例を挙げて説明します。

    最初からまとめて贈与するつもりとみなされるケース

     例えば、親が毎年110万円を子供に贈与した場合、各年の贈与は非課税枠内であり、贈与税はかかりません。しかし、「10年間にわたって毎年110万円を贈与する」といった贈与契約を最初に結んでいた場合、税務署は、この一連の贈与を「最初から多額の贈与をする意図があった」とみなすことがあります。

    この場合、10年分の合計額1,100万円から基礎控除110万円を差し引いた990万円に対して贈与税が課税される可能性があります。つまり、個々の贈与が非課税範囲内でも、長期間にわたる計画的な贈与だと判断されると、贈与税が発生するリスクがあるのです。

    贈与契約が無効とみなされるケース

     さらに、親が子供に何も知らせず、子供名義の口座に定期的に送金していた場合、税務署は贈与契約自体が成立していないと判断することがあります。贈与とは、贈与する側とされる側の意思の合意が必要です。贈与を受けた側(子供)が、贈与を知らなかったり、同意がなかった場合は、贈与契約が無効とされ、その財産は贈与とは見なされなくなります。

    110万円の非課税枠を活用した生前贈与の注意点とは?

     110万円の非課税枠を活用した生前贈与を成功させるためには、次の2点に注意が必要です。

    1.はじめから多額の贈与をする意図があったとみなされないこと

    2.きちんと贈与契約が成立していること

      これらが守られていない場合、生前贈与した財産に贈与税が課税されたり、相続時に相続財産として加算される可能性があります。以下では、具体的な注意点について解説します。

      贈与のたびに贈与契約書を作成する

       はじめから多額の贈与をする意図があったとみなされないためには、毎年贈与を行うたびに贈与契約書を作成することが重要です。一度に10年間の贈与契約をまとめて行うと、税務署に「最初から1,100万円を贈与する意図があった」と判断される可能性があります。そのため、毎年個別に贈与契約書を作成することをお勧めします。

      贈与契約書の作り方

      贈与契約書は、次の要素を含めて作成します。

      1.贈与者と受贈者の名前を明記し、両者間で贈与契約が成立した旨を記載します。

      2.第一条として、贈与者が贈与を約束し、受贈者がそれを承諾する内容を記載します。

      3.第二条として、贈与の方法と金額を明記します。

      4.両者が契約書を1通ずつ保管することを明記し、署名・捺印を行います。

        110万円を少し超える金額で毎年贈与税を納める方法もある

         毎年の贈与を110万円ちょうどではなく、少し超える金額を贈与し、贈与税を少額でも支払うことで、多額の贈与を意図していないことを示す方法もあります。例えば、115万円を贈与した場合、5万円に対して贈与税5,000円を納めることになります。これにより、毎年贈与税を申告・納税することで、計画的な贈与だと見なされにくくなります。

        生前贈与は必ず受贈者に知らせる

         生前贈与を行う際は、受贈者にその事実を必ず知らせておくことが大切です。贈与は、贈与者と受贈者の双方の同意で初めて成立します。受贈者が贈与を知らなければ、贈与は成立せず、税務署に贈与と認められません。

         たとえば、親が子供に知らせずに子供名義の口座に送金していた場合、その預金は親が管理していたと見なされ、相続時に相続税の課税対象となる可能性があります。

        贈与された財産は受贈者が自分で管理する

         生前贈与で受け取った財産は、受贈者が自分で管理することが重要です。親が子供の預金口座を管理し続けると、贈与が成立していないと判断されることがあります。受贈者が財産を自由に使える状況でなければ、税務署は贈与が実際に行われたとは認めません。

        正しい知識で万全な相続税対策を

         今回は、生前贈与に活用できる贈与税の非課税枠や、110万円の非課税枠を使った生前贈与の注意点について解説しました。110万円の非課税枠を上手に活用することで、まとまった財産を無税で贈与することが可能です。

         しかし、贈与する金額や利用すべき制度、贈与の手続きに少しでもミスがあると、期待していた節税効果が失われることもあるため、十分な注意が必要です。相続税対策として生前贈与を検討している方は、正しい知識を持つことが重要です。これから生前贈与を始めようと考えている方は相続税に詳しい税理士に相談することを強くおすすめします。

         齋藤久誠公認会計士・税理士事務所では、お客様一人ひとりに最適な贈与プランをご提案いたします。自分にあった生前贈与を行いたい方は当事務所までご連絡ください。

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